民謡は難しくないし、古臭くない!日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。第7弾は青森県民謡、謙良節。
津軽地方、特に弘前近辺で唄われる民謡で、おめでたいキーワードがふんだんに詰め込まれた祝い唄です。メロディーはなんだか雪国の風情を感じさせてくれます。
児玉宝謹の寸評
これより祝い唄を2本お届けしますが、お若い世代の方は「おめでたい言葉」って、いくつ挙げられるかな?
紅白とか、松竹梅とか、鶴亀とか~
めでたいも漢字で書くと「目出度い」とか…
人生ポジティブに生きようってのは今どきな言い方ですが、お目出度い言葉やセリフを列挙していくと、日本人の文化って深淵なものなんだなぁと。教養も身に付きますしね。そういうポジティブも、あっていいかもです。
例えばラストコーラスの歌詞、四季を唄うのに冬から始まってる辺り。春夏秋冬ではなく「冬春夏秋」が正しいんですよね。一年の始まり1月は冬ですから。で、実りの秋で終わるからハッピーエンドなわけで、寒い冬で終わったら、それこそ年越しがひもじくないかい?(笑)
一日の始まりも午前0時は夜だから、正しくは「夜朝昼晩」。ディナーを夜ごはんという子がいましたが、正しくは晩ごはん。その時に飲むお酒を晩酌というのも、如何にもですね。
ではでは、お楽しみ下さいませ。
歌詞を読んでみよう!
さても「エ」 目出度いこの家の座敷
奥の座敷は 涼み座敷 六尺屏風を 立て回し
折り目折り目に 鷹を書く 鷹はさえずる 何と聞く
「ハー」福福と「エ」 ハー○○○福を呼ぶ
*
さても「エ」 目出度い正月様よ
年の初めに 千代八千代 鶴の一声 祝わなん
若水汲んで 屠蘇酒を 一富士二○鷹三なすび
「ハー」明けて うれしや初夢で
*
さても「エ」 目出度い正月様よ
門に立てたる 五蓋松 風がそよそよ 雪ほうけ
降り来る雪は 黄金なり 庭にはえずる 亀の舞
「ハー」鶴鶴と「エ」 唄○う はねつるべ
*
松高く「エ」 雲まで届○○け○○
枝も連なる 鳩の胸 月の桂の 男山
神にあゆめと 運ぶなり 祝いの水も 澄みやかに
汲み交う翁の 笑い顔 ここぞゆかしく 高砂の
尾上の松も○ よろよろな 木の下陰の 落ち葉かく
「ハ」末も「エ」 久しきためしかな
*
さても「エ」 見事な岩木富士
冬は真白く 春青く 夏は墨染 秋錦
「ハー」衣「エ」 替えする鮮やかさ
詳しい解説
青森県民謡。津軽地方で広く唄われている祝い唄だが、元は元新潟県新発田市出身の松崎(松坂とも)謙良という俳諧師が作ったという説がある。但し、謙良とは架空の名前で、正しくは検校(けんぎょう)とも言われている。
彼は、地元新潟から山形、福島、青森とさすらいの旅を続けながら、越後では婚礼や祝いの席で唄う「松坂」を、行く先々で唄い残していったのだが、その調子は誠に深淵荘重な気分のもので、琵琶唄か江戸小唄に似たものであったらしい。その後、北海道に渡って「越後松坂くずし」を唄ったのだが、その唄い手「松坂検校」が訛って「ケンリョウ節」となり、再び津軽地方に入って「謙良節」となったと言われている。
尚、津軽地方ではこの唄のことを「けんねん節」とか「けんぎょう節」とも呼んだ。
演奏のポイントと難易度
竹物。尺八と独唱。つまり二人。お囃子も居ないので、吹き手と唄い手の実力がモロにでますっ!
ちょっとキャリアを積まないと、骨かも(汗)
難易度:レベル4/5
寸評にも書きましたが、祝いの歌詞が持つモードやシチュエーションが、どこまで表現できるか!?声量やゆりこぶしのテクニックもともかく、この曲の味は、そういう場を一度は体験しないと、出せないかもですね。