民謡は難しくないし、古臭くない! 日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。
「北海道シリーズ全10曲」のラストは「船漕ぎ流し唄」。
ソーラン節は、実はこの唄の一部だったんですよ~♪
児玉宝謹の寸評♪
上記にもあるように「流し漕ぎ組曲」ともいうべきものの一部がソーラン節だったとは驚きです。
いわばこの組曲の中で最も出世したのがソーラン節というわけですが、この「船漕ぎ流し唄」も民謡通の方ならご存知ですね。全体に「ヤン衆」という職業がどんな感じかを、この唄は端的に表してくれていますし、現代では幻の魚とも言われている「鰊(ニシン)」の漁が、かつては如何に隆盛を誇ったかも、そのフレーズから伺えます。
歌詞を読んでみよう♪
*ヤアセーノヤーセーエ(ホヤセ) ヤンサーノヤーセーエ(ホヤセ) ヤアセーホー(キタカホイサ)
あの岬(さき)越えれば「ナ」 また岬(さき)出てくる「ナ」
囃子を揃えて「ナ」 櫂先揃えて「ナ」 揃えて「ホーエー」(キタカホイサ)
*
東風(やませ)に雨だろ「 」 鰊の大漁だ「 」 親方喜ぶ「 」 ヤン衆は疲れる「 」
疲れる「 」( )
*
鰊の大漁で「 」 沖揚げ終われば「 」 荷回し忙しい ヤン衆の船漕ぎだ
船漕ぎ「 」( )
*
寿都(すっつ)に出風(だし)ある「 」 山には雪ある「 」 沖には波ある「 」 親方金ある「 」
金ある「 」( )
詳しい解説♪
北海道道南地方の漁師たちによって唄われていた、鰊作業の一部である「流し漕ぎ」の櫓調子を元に、札幌在住の民謡家松本晁章氏が作詞作曲した新民謡である。
江戸時代「鰊は松前の米」と言われていた。鰊の群来に湧く北海道沿岸では、ヤン衆たちが一斉に船を漕ぎ出し沖へ向かい、鰊を満載して浜へ帰る作業を一日中続けた。
それを統括していたのが、船の艫(とも)に立った船頭の「波声(はごえ)」と呼ばれる巧みな音頭取りで、ヤン衆たちを飽きさせず、船の加減を唄で整える役割を担っており、なかなか年期のいる仕事であったらしい。鰊漁場に於ける一連のそれは「櫓調子唄」といって、普通に漕ぐ「オシコイ」、立ってゆっくり漕ぐ「ホオホラホイ、エエソーラン」、後ろ漕ぎの「ヨイトサンヨ」、船おろし「ドウトコ」、そして流し漕ぎ「ヤンサノヤッセ」等がある。
つまり「船こぎ流し唄」は、戻り船の時など、比較的のんびり漕ぐ時に使われる櫓調子なのである。従ってその演唱者は、力強さのなかにも流し漕ぎらしいなめらかさが必要であり、また同時にヤン衆の氣さくな茶目っ氣も漂っている。
演奏のポイント♪
お三味線、尺八、お太鼓、そしてお唄とお囃子という、これも典型的な民謡クインテットです。意外にも新民謡なので、お三味線のレフトハンド、つまり装飾音や、鳴り物の工夫などは、案外クリエイトな発想を加味しても良いのではないかと僕は思いますね。ただ大事なのは、シチュエーションに基づくものであること。鰊が大漁なのは、嬉しくもあり、しんどくもありw でも親方の波声が上手に調子を取ってくれて、つまりはやり甲斐のある仕事に誇りを持てている・・・そんなヤン衆たちの心境に添ったアイデアであれば、一味違った価値観の創出ということで、良いのではないでしょうか。