民謡は難しくないし、古臭くない!日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。第4弾は宮城県民謡のさんさ時雨。
婚礼などのおめでたい席では、必ずといっていいほど登場する民謡。有名な九州の「黒田節」に匹敵するともいわれる、格調の高い名曲で、あの伊達政宗の戦勝の唄ともいわれています。もともとは、手拍子だけで唄われており、三味線の伴奏がつくようになったのは明治以降だとか。今でも唄い継がれる名曲です。
児玉宝謹の寸評
個人的意見ですが、伊達政宗は戦国武将の中で最も好きな人物です。でも解説にもありますように、実は関連性は無いとのこと(笑)
それはともかく、初めて聴く方には、歌詞がほとんど聞き取れないと思います。Youtubeでお聴きになるとおわかりかも知れませんが、上記の歌詞を辿らなかったら、ホンマに「さんさ時雨か」の冒頭くらいしか見当がつかない…まぁ、往々にして邦楽の歌詞は聞き取り難いものですが…
お三味線の調子は、普通「二上り(にあがり)」ですが、これはほぼ男性用キーと言っていいほど中低音域なので、本調子の女性用キーを併用している流派会派もあります(うちも併用してます)。
宮城県ご出身の知り合いの娘さんが挙式なさった折り、招かれてこの曲をお祝いに唄わせて頂いたことがありますが、流石にそのご親戚一同さまが揃って朗々とご唱和なさり、威風堂々たるその有様に気圧された覚えがあります。地方では現代でも民謡が、現在進行形で活きてるんですねぇ~
因みに、民謡「さんさ時雨」の他に、料亭中心の「お座敷さんさ」という唄もあるんですよ。
歌詞を読んでみよう!
さんさ時雨か 萱野の雨か(ハァ ヤートーヤートー)
音もせで来て 濡れかかる「ションガイナ」(ハァ メデタイメデタイ)
この家座敷は 目出度い座敷( ) 鶴と亀とが 舞い遊ぶ「 」( )
雉のめんどり 小松の下で( ) 夫(つま)を呼ぶ声 千代千代と「 」( )
門に門松 祝いに小松( ) かかる白雪 みな黄金「 」( )
さんさ振れ振れ 五尺の袖を( ) 今宵ふらいで いつの夜に「 」( )
武蔵あぶみに 紫手綱( ) 乗せてやりたや 春駒に「 」( )
詳しい解説
県内はもちろん、旧仙台藩の福島、岩手、山形県の一部でも唄われている祝い唄である。特に婚礼の席では現在でも謡曲に次いで出るのがこの唄で、「さんさ時雨、この家座敷、雉のめんどり」を三幅一対、または三幅対と称し、きちんと威儀を正して合唱し、唄い終わって座をくずし、酒がまわって他の民謡が出るという具合なのである。この三幅一対のうちの「雉のめんどり」の代わりに「さんさ振れ振れ」を唄う地方もある。
天正17年(1589)6月5日、伊達正宗が磐梯山摺上原(Bandaisan Suriagehara)で、会津の芦名(Ashina)氏を打ち破った時の戦勝の唄という説があるが、これは伝説である。何故なら、まず戦勝を匂わせる歌詞がないことと、負けて恨みをもつ福島県会津地方で敵の凱歌が祝い唄として唄い継がれるはずがないからである。これは文化文政年間の「下関節(Shimonoseki bushi)」や「しょうがい節」その他の流れとするのが正しい見解だと思われる。
演奏の難易度とポイント
構成:三味線。唄。お囃子。鳴り物。
レベル:2/5
解説にもありますように格調高い曲なので、弾き唄いは可能ですが、伴奏、唄、囃子、鳴り物と、役割を分担して臨まれるほうがいいと思います。難しいのは、1フレーズの息が長いこと。途中で息切れして盗み息して、フレーズの勢いを削いでしまわないよう、ペース配分に留意が必要ですね。