民謡は難しくないし、古臭くない! 日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。
「北海道シリーズ全10曲」5曲目は「道南口説(どうなんくどき)」です。。。
児玉宝謹の寸評!
この曲を最初に聴いた時、三拍子なのか二拍子なのか悩みましたw そもそも農耕民族が大半の日本人にとって三拍子は「外来」なので、樺太経由か朝鮮半島経由かのいずれかと言われているにせよ、要するに取り入れたものの全くのコピーは出来なかったというのが実のところではないかと思うのです。それでも長年その土地で唄い続けられると「正しく三拍子」という演奏は「NO」とされるのですから、どうにも感心としか言い様がないなぁと・・・そうなると、洋楽的な素養は却ってコピーの邪魔になるかもですが、音感が良ければ忠実に再現できるだろうと思いますね。
歌詞を読んでみよう!
「オイヤーサーエー」
「オイヤ」私ゃこの地の 荒浜育ち 声の悪いのは 親譲りだよ
節の悪いのは 師匠ないゆえに 一つ唄いましょ 憚りながら
「 」主と別れた やまの上の茶屋で カモメ鳴く鳴く 臥牛(がにゅう)のお山
甲斐性ないゆえ 弁天様に ふられふられて 函館立てば
「 」着いたところが 亀田の村で 右に行こうか 左に行こか
ままよ七重浜 舟別過ぎて 行けばなさけの 上磯ござる
「 」足を伸ばして 峠にかかる 上り一里で下りも一里
浜に下がれば 白神の村 ついに見えたよ 松前城下
今夜の泊りは 城下の茶屋で 泊まるサーエ
詳しい解説!
北海道民謡。
「口説き」の音楽的意義には、歌詞によるものと、曲によるものとの二種類がある。その性質は、
1,繰り返し
2,哀れを誘うように切々と
3,長々と唄う
というものである。
今一つ、
「口説き」には三種類がある。
1,神社や寺の建立に用いる重い建材を運ぶ労働者に、その由来を説いて労働の意義を唱えたり、仕事を捗らせるた
めに唄を唄った「木遣り口説き」
2,寺の僧がお盆の時に説法をしたという「盆踊り口説き」
3,瞽女(ごぜ)や座頭が人生の悲哀を唄った「瞽女口説き」
である。
盆踊り口説きなどは、やがて僧に代わって美声の持ち主が、当時の事件や物語を唄に盛り込む形に変化した。詩形としては、7575、7777などで、相川音頭がよい例である。それらのいくつかは日本海を渡る北前船に船乗りたちによって鯵ヶ沢甚句、深浦甚句となった。
この道南口説は、前述の経緯によって函館市周辺に至ったもので、初めは鈴木主水や八百屋お七などの物語がであったが、やがて当地の地名を盛り込んだ地名づくし変化し、それを瞽女たちが門付けで唄っていたと伝えられているものである。唄の冒頭で「御免下さい」を意味する”オイヤサエー”に、その名残が感じられる。
道南口説を直接発掘したのは、江差追分の第一人者佐々木基晴氏で、昭和28年頃、NHKラジオ放送を通じて発表した。今では北海道の代表的な民謡として全国的に愛唱されている。
演奏のポイント!
津軽三味線、〆太鼓、尺八、お唄のクインテットです。言わずもがな、三味線と唄の技量が、この曲の大半を占めています。寸評でも申しましたが、変則三拍子とも言える独特のリズムは、それこそ幼い頃からこの地に住んで、子守唄のように聴いて育ったか、他所であっても民謡環境で育ったかという方には「おもしろい」で、あっさりと楽しめるのでしょうけど、生粋の洋楽脳の方には全く以て不可解な感じだと思いますね~ 僕は民謡生まれ洋楽育ちなので両方の言い分がわかりますが、仮に洋楽的に例えるならウインナワルツというものもあるわけで・・・要するに音感があればコピー出来ます! 同じ日本人のすること&人間のすること。出来ないことはないです。三味線の運指もさほど難度が高いものではないので、先ずはこのリズムに慣れて、次にお唄の方はとにかく「ゆりこぶしてんこ盛り」なので、発声法に基づいたトレーニングが必須ですね~ どんなトレーニングかは、いつかご縁があればご紹介しましょう。。。