日本民謡ガイドブック

民謡ガイド㉔ 酒造り祝い唄 〜解説、歌詞、意味〜

酒造り祝い唄

民謡は難しくないし、古臭くない!日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。第24弾は兵庫県民謡、酒造り祝い唄です。

何とものどかで賑やかな、酒郷の宴会風景が見えてくるような、日本民謡らしい一曲。唄をまったく知らない人でも、演奏に合わせて手拍子や踊りが出てきそうな曲ですよ。

児玉宝謹の寸評

全国に酒造りの唄は数多ありますが、これは僕の地元「灘五郷(なだごごう)」を舞台に作られた新民謡です。

発祥は、伏見の酒造を手本としつつ、六甲山系から湧き出る「宮水(みやみず)」が独自の味わいを醸し出していることと、日本三大杜氏(南部・越後・丹波)のうち、後者2つの地域出身の杜氏が持つ高い技術力に支えられ、全国区の銘柄が軒を連ねる酒造エリアとなっています。

民謡の楽しみ方

 

但しこの新民謡は、そんな重たさより、あくまで賑やかで目出度くウキウキするような曲想に仕上がっており、曲目が示す通り「祝い唄」として、楽しい宴席などで唄うのにピッタリです。

 

 

歌詞を読んでみよう

心清めて柏手打って 臼の抜ける程 搗いて搗いておくれ(ハァドッコイドッコイ)
米が白けりゃお酒もうまい あとは親方さんの「ヨ」 腕次第(ハァドッコイドッコイ)
正月門には「ナ」松が立つ「ヨ」 二月初午「ナ」お馬が立つ「ヨ」 (ハァドッコイドッコイ)
******
向こう鉢巻いなせな喉を 灘の娘がちょいと来て覗く(   )
女入れない酒蔵なれど ほんに親方さんは「 」 色男(   )
三月節句は「 」雛が立つ「 」 四月八日は「 」釈迦が立つ「 」(   )
******
祝儀袋をさらしに巻いて 戻る越路の出稼ぎ峠(   )
酒を土産に嫁ごも連れて ほんに親方さんは「 」嬉しかろ(   )
霜月畑の「 」霜が立つ「 」 師走こたつの「 」足が立つ「 」+
(コラ 鶴さん御門に巣を掛けりゃ 亀さんお庭で舞い遊ぶ ハァドッコイドッコイ ドッコイナ)

 

詳しい解説

兵庫県の新民謡「酒造りの唄より」より。

公式の解説文は見当たらないが、作詞星野哲郎、作曲遠藤実、編曲は藤本流初代家元藤本秀丈という錚々たるメンバーで作られた曲というだけでも、話題性は充分である。

全国有数の酒どころ「灘五郷」が舞台だが、3番歌詞「戻る越路の出稼ぎ峠」とあることから、この親方さんの出身地は新潟県であることと、灘五郷で越後杜氏が仕込む銘柄の有名どころは「剣菱」であるということまでは察しがつく。地元であれば「越乃寒梅」あたりであろうか。酒屋万流といって酒造は誠に千差万別、全国各地でそれこそドブロクなどは個人で造っていた時代もあったが、酒造法の現代で日本三大杜氏といえば、南部杜氏、越後杜氏、丹波杜氏となる。

酒造りには、仕込む樽を洗う桶洗い唄から献上するまでの、全ての工程に唄がある。それは作業効率の向上や疲労軽減だけでなく、フルコーラス唄い終わるとその作業が完了するように作られているが、この唄はあくまで親方さんを主人公にした楽しい唄として愛唱されている。

 

演奏のポイント

この曲想を表現するなら当然、大人数で賑やかに唄い、演奏し、可能なら舞い踊っても構わないほどでしょう。ただ鳴り物とお三味線が、ジャカジャカとどうしてもテンポアップしがちなので、キープすることだけ心がけて下さい。

あとは明るく楽しく、何なら地元のお酒を味わいながら唄い踊るのも、また一興ですね!!

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