民謡は難しくないし、古臭くない!日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。第17弾は北海道民謡、「ソーラン節」。
民謡に馴染みのない方でも、聞いてみれば「知ってる、知ってる」という声があがりそうな有名曲。北海道に旅行に行けば、観光地や居酒屋さんのBGMとして耳にする機会もあるでしょう。北の海を想起させる、力強い曲について知っていきましょう。
児玉宝謹の寸評
これは誰でもご存知!チョー有名な北海道民謡ですよね。
始めに世に出たのは、当時の民謡家元伊藤多喜雄氏の「多喜雄のソーラン節」。氏はこの曲で紅白にも出場しました。それから激しい演舞の「南中ソーラン」へ受け継がれ、現代は高知県のよさこい節と合わさって「よさこいソーラン」となるなど~
時代の変遷と共に変幻自在な進化を見せている民謡です。
歌詞を読んでみよう
(ハァドッコイ)「ヤーレンソーランソーラン ソランソーランソーラン」(ハイハイ)
鰊来たかとカモメに問えば 私ゃ立つ鳥 波に聞け「チョイ」「ヤサ エーエン ヤーン サーノ ドッコイショ」(ハア ドッコイショ ドッコイショ)
( )「 」( )沖でカモメの鳴く声聞けば 船乗り稼業はやめられぬ「 」「 」( )( )「 」( )今宵一夜は緞子の枕 明日は出船の波枕「 」「 」( )
( )「 」( )乙女心のハマナス咲いて 今宵出船に色添える「 」「 」( )
( )「 」( )波の瀬のせでドンと打つ波は 可愛い船頭衆の度胸だめし「 」「 」( )( )「 」( )男度胸なら五尺の身体 ドンと乗り出せ波の上「 」「 」( )
( )「 」( )泣いてくれるな出船の時に 沖で櫓櫂が手につかぬ「 」「 」( )
( )「 」( )あの娘可愛いやリンゴの花か 夜毎想いの増すばかり「 」「 」( )( )「 」( )鰊来るかと稲荷に聞けば どこの稲荷もコンと鳴く「 」「 」( )
( )「 」( )沖のカモメが物言うならば 便り聞いたり聞かせたり「 」「 」( )( )「 」( )吹いてくれるな夜中の嵐 主は今宵も沖泊まり「 」「 」( )
( )「 」( )唄に日暮れてカモメに明けて 寄せる鰊のうろこ波「 」「 」( )
( )「 」( )玉の素肌が飛沫に濡れりゃ 浮気カモメが見て騒ぐ「 」「 」( )
( )「 」( )踊る銀鱗カモメの唄に お浜大漁の日が昇る「 」「 」( )
( )「 」( )漁場の姉コは白粉いらぬ 銀の鱗で肌光る「 」「 」( )
( )「 」( )嫁コ取るなら鰊場の娘 色は黒いが気立て良い「 」「 」( )
詳しい解説
北海道民謡。
北海道を代表する仕事唄で、江差追分と共に全国的にも名高いこの唄は、鰊子叩き唄の「いやさか音頭」と並んで鰊場にとってはなくてはならない作業唄でもある。
発祥は安政3年(1856)積丹(しゃこたん)半島古平(ふるびら)場所。ここで秋元某が枠網漁法を発明してから後のことである。というのも、この唄が実際に漁場で唄われるのは、沖の船から枠網の中へ追い込んだ鰊を、大きなタモ網で汲み上げる時で、掛け声の「ソーラン」は「ソラソラ」という催促を意味し「ハイハイ」はその答えという背景があるからであるが、実情はかなり力の要る必死の作業で唄どころではない。とはいえ、仕事の辛さを紛らすため、時には勝手気ままに色んな唄を挟み込んで唄っていたらしい。
そのソーラン節が全国に流行し始めた昭和27年頃になると、当の鰊が次第に幻の魚となっていったのは皮肉なことで、往時の華やかさを知る人々にとっては「鰊恋唄」とでも言うべきものなのかもしれない。
現在の節回しは、今井篁山氏の編曲によるものだが、昔は「近場所」と言われた函館方面、「中場所」の岩内、磯谷方面、「奥場所」の美国、石狩、増毛(ましけ)方面の、主に三カ所でそれぞれ唄い方が異なっていたようである。
演奏のポイント
一言で言えば「パワー」ですっ!
解説にもありますように、発端は荒海での作業唄・・・それから地域性により太棹の津軽三味線で伴奏の手が入ってからは、力強い表現になっていることと、「多喜雄のソーラン節」でも解るように、ロックコラボの要素も加味される等、多角的な進化を見せてはいても、一貫して変わらないのは「パワー」。
そりゃそうでしょ。激しく揺れる北海の船上で、重いニシンを引っ張り上げる作業は「キツイ」なんてもんじゃないですよぉ~ そこは外してはいけない部分なので、テンポ云々より、とにかく力強く演奏歌唱して下さい。
三味線、太鼓、尺八、そして唄と囃子・・・ 北の漁場の男の唄です!!!