日本民謡ガイドブック

民謡ガイド㊳ 神楽せり唄 ~解説、歌詞、意味~

 

民謡は難しくないし、古臭くない! 日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。
宮崎県シリーズ第4弾は「神楽せり唄」です。日本で一番、期間が長い祭りです♪

児玉宝謹の寸評!

そうなんです! 解説にもありますが、3か月間! 岐阜県郡上八幡の郡上踊りで、7月中旬から9月中旬までの2か月間ですからね。と言って余程することが無いのかと言えば怒られますよ(笑) だって考えてもみて下さいな。その間、見物人などをずっともてなしてるんですから。相当の蓄えといいますか、豊かでないと、もてなせないですよね!
それはつまり、単に山深いのではなく、高千穂は古の神の統べる王朝があったわけで~ そう言えばご理解頂けますでしょうか。しかもお神楽です! 神の恵みと人の感謝がかみ合ってこその、この祭りなわけです。
ではでは、どんな楽曲なのでしょう~

歌詞を読んでみよう!

(ハ ヨイヨイサッサ ヨイサッサ ヨイヨイサッサ ヨイサッサ)
今宵サ夜神楽にゃ せろとて来たが「サイナ」 せらにゃそこのけ わしがせる「ノンノコサイサイ」

(   )今宵サ神楽は 十二の干支よ「   」 飾り立てたる 注連神楽「   」
(   )神楽太鼓に つい浮かされて「   」 老いも若きも せり出だす「   」
(   )月の出潮と 言い合わしたが「   」 月は山端に わしゃ木場に「   」
(   )銀のかんざし 伊達にはささぬ「   」 せり場若衆を婿選りに「   」
(   )さんざせろせろ 肌寒夜寒「   」 せれば熱ぅなる 恋となる「   」
(   )神楽太鼓に 氣は浮かされて「   」 いつもドンドと なるばかり「   」
(   )さまは三夜の 三日月さまよ「   」 宵にちらりと 見たばかり「   」

詳しい解説!

宮崎県民謡。
西臼杵郡高千穂地方で、初冬から三か月間に亘って行われる「夜神楽」に伴う見物人の囃子唄で、ゆえに「夜神楽せり唄」ともいう。この地方の夜神楽は出雲系のもので、その歴史は古い。
刈り干し切りの作業が終わり、九州山脈の頂に初雪が降る頃になると、、各区持ち回りで「夜神楽三十三番」が夜を徹して舞われる。収穫への感謝と、来年の豊作を祈る「予祝い」の行事でもある。
この夜神楽が始まると、民家が神楽宿となるのが普通である。見物に来た近在近郷の人々は毎夜、座敷や庭前の所定の「せり場」に押し寄せて、景気づけに、また寒さ払いに肩を組み合い、演奏者を応援する意味も込めて、押し合い揉み合いが始まり、床も落ちんばかりに足踏みし、神楽太鼓に調子を合わせて、大勢で勇壮にせり踊るのである。
この地方の人々にとって、手作りの料理やふるまい酒を味わい、「せり」を楽しむこの時期は、正に「神楽月」なのである。

演奏のポイント!

現在でこそ三味線、鳴り物、横笛に、お唄とお囃子というクインテットですが、現地では元々アカペラと鳴り物が主流で、お三味線は後年、他所で付加されたものと思われます。そういう成り立ちを生かして素朴さを前面に出すか、現代舞台芸能とカテゴライズしてデコラティブな味付けにするかで、お唄の「ゆりこぶし」の付け方や、お三味線の手数、鳴り物のフレーズも変わってくるでしょうね。因みに僕は後者派ですかね~ 素朴さで味わいが出せるのは、やはり地元ならではであって、他所の者が敵う筈もありませんのでね~ いずれにしても「ご陽氣な神様」を楽しく演出できればいいと思います。

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