民謡は難しくないし、古臭くない! 日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。
宮崎県シリーズ第5弾は「元唄刈干切唄(かりぼしきりうた)」です♪ 高千穂に伝わる唄は、どれも独特の品があるように思います。
児玉宝謹の寸評!
刈干切唄の元唄をご存知の方は、地元以外ではそうおられないかも知れません。手前共幸真會でも、地元ご出身の會員さんから教えて頂いて、アーカイブに加えたという経緯があるほどですから~
で、一般に伝わっている楽曲との違いは、元唄がメジャー、一般唄がマイナーという調子の違いだけで、テンポ感とか雰囲気などは殆ど同じです。元唄というからには、時系列的にこちらが先に発祥したわけですが、ではなぜメジャーがマイナーに変わったのか? それは次回投稿予定の「刈干切唄」のページで述べさせて頂きます。。。
歌詞を読んでみよう!
ここの山○の 刈り干しゃ済んだ「ヨ」 明日は田んぼで 稲刈ろか「ヨ」
もはや日暮れじゃ 迫々かげる「 」 駒よいぬるぞ 馬草追え「 」
秋も済んだよ 田の畦道を「 」 あれも嫁じゃろ 灯が五つ「 」
誰に見しょうと(たれに見らりょと) 思うて咲いた「 」 谷間谷間の 岩つつじ「 」
唄でやらかせ この位の仕事「 」 仕事苦にすりゃ 日が長い「 」
雨もざんざ○ 霧も○ざんざ「 」 今朝の朝草 刈りかねる「 」
雨か霞か 峠の茶屋で「 」 別れ袂が 濡れかかる「 」
私ゃここ○の 深山の小笹「 」 藤にまかれて 寝とうござる「 」
屋根は萱葺き 萱壁なれど「 」 昔ながらの 千木を置く「 」
おまや来ぬかよ 嬉しい逢瀬「 」 こよさ母屋の 唐黍むき「 」
お日は照る照る 刈干ゃ乾く「 」 さぞやよろこぼ 牛馬は「 」
詳しい解説!
宮崎県民謡。
秋には美しい紅葉で有名な、宮崎県西臼杵郡高千穂地方の、萱刈りの作業唄である。
刈り干し切りというのは、日向の高千穂辺りの野山で生えている笹や萱を、刈り取ってよく乾かしてから、民家の屋根を葺いたり牛馬の飼料にするという作業のことである。急勾配な山の斜面で、柄の長さが1メートル以上もの鎌を振り回しながら萱をなぎ倒すかなり重労働な作業で、盛りの秋頃には迫々で掛け合いで唄われたこともあったという。
高千穂の町だけで唄われる正調と、広く流布されているものとの二種類があるが、いずれも大鎌を使う動作により、節回しやテンポは悠長なものである。尚、町当局ではこの唄の普及に「刈り干し切り歌」の免許証を出しているそうだ。
高度で上品なこの唄が、いつ頃どのようにして作られたのかは全く不明である。大正末期に、故秩父宮殿下がこの地に見えられた時にお耳に入れられたと云われている。
演奏のポイント!
お囃子はないので、純粋にお唄と尺八とのDUOになります(一般唄も同じです)。それだけにお互い責任重大ですねぇ~ いずれ後日、演奏動画もアップしていくことになりますので、元唄と一般唄との音楽的な違いを味わって頂ければと思いますが、解説にもありますように、作業そのものが大味だし、急斜面を移動しながらというのは、俊敏に動けるものではないこと、また午後から夕方という時間的なシチュエーションもあるので、そういった雰囲気が醸し出せればいいですね。この作業が今でも行われているかは存じませんが、せめて一度現地を見る機会があればいいかもしれません。