日本民謡ガイドブック

民謡ガイド㊲ 日向木挽き唄 ~解説、歌詞、意味~

 

民謡は難しくないし、古臭くない! 日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。
宮崎県シリーズ3曲目は「日向木挽き唄」。宮崎県の竹物もまた、味わいがあって宜しいですよぉ~♪

児玉宝謹の寸評!

宮崎県を代表する竹物といえば、この日向木挽き唄と、次々回でご紹介する刈干切唄だと思います。いずれも、シンプルな中に深い味わいがあって、当地ではそれぞれの曲の全国大会が催されているほどです。
解説にもありますように、現在では林業と言いますが、昔で言う、樵(きこり=伐採)、木挽き(製材)といった「山師」たちは、高給取りだったんですよね~ その代わり人里離れた山奥で、しかも一定期間、一人っきりで黙々と作業をするのは、氣楽な反面、人恋しくもあり、複雑な心境だったと思います・・・
唄そのものは他県からの移入+改作によるものですが、南国らしい明るい曲調で、全国の人々に愛されています!
因みに!
コーラス最後の囃子言葉(ハー チートコ パートコ)について、学校邦楽教育の一環で、とある中学校に赴いた時のこと。生徒の一人が「それは何の鳥の鳴き声ですか?」という質問がありました。流石に答えに窮しまして、帰宅してから調べましたが、何処にも明記されておりません。僕は民謡の解説や歌詞の意味で判らないところは、今でこそネット検索が主流ですが、加えてその土地の県庁へ電話をして専門の方に教えて頂く方法を取っていました。で、この件に関しては、宮崎県庁から観光協会へ回された結果「特に何の鳥ということはございません。山で聞こえてくる鳴き声を模して、このように囃しております」とのご回答。なので改めてその中学校に、このお答えを伝えたものでした。
これはどの世界にも言えますが、なまじその筋の人間は、何の氣無しにスルーすることが少なからず・・・でも人も所も変われば「その常識は非常識だった」と氣付くんですよね~ 交流やコラボは活性化ですね~

歌詞を読んでみよう!

*ヤーレー 山で子が泣く 山師の子じゃろ ほかに泣く子が あるじゃなし(ハー チートコ パートコ)
*山師さん達ゃ 山から山へ 山師ゃやもめで 子は持たぬ(   )
*大工さんより 木挽きが憎い 仲の良い木を 挽き分ける(   )
*七十木挽きにゃ 物言うな娘 木挽きゃ七十が 花じゃもの(   )
*木挽きの女房にゃ なるなよ娘 月に二十日は 後家暮らし(   )
*山で切る木は 数々あれど 思い切る木は 更にない(   )

<日南地方の歌詞>
(チートコ パートコ)鋸よさがれよ 墨ままさがれ われとおれとの 金儲けよ(やれひけ それひけ)
墨まま→墨壺のように一直線にの意
(   )木挽きゃ出てゆく 木場の麦ゃうれる 誰を力に 麦刈ろかよ(   )
(   )山で子が泣く 山師の子じゃろ 山師ゃやもめで 子は持たぬ(   )
(   )親がやるとも 木挽きさんにゃ行くな 仲の良いのを 挽き分ける(   )
(   )山師さん達ゃ 山から山よ 花の都にゃ 縁がないよ(   )
(   )人の情けと 煙草の煙 次第次第に うすくなる(   )
(   )主と私は 羽織の紐よ 固く結んで 胸に置く(   )

詳しい解説!

宮崎県民謡。
宮崎県は古来より広大な山林を有し、沢山の木材を産出しているが、この唄はその木材の切り出しや製材の時に、大きな鋸を手にした杣夫や木挽き山師たちによって唄われた仕事唄である。当時の木挽き山師は、大鋸で木材を手挽きする筋骨隆々とした一級技術士であったため、待遇も良く、唄にもあるように村娘の憧れであった。
この唄の源流は、冬の農閑期を利用して九州山地へ出稼ぎに行った、広島県の木挽き職人が伝えた「広島木挽き唄」だと言われており、県北の北川町、県中の諸塚村、県南の北郷町などにそれぞれ代表的な唄がある。
今日の節回しは、那須 稔(美静)が、故郷東臼杵郡西郷村の木挽き唄に、西諸郡地方の木挽き唄の囃子言葉を入れてまとめたものである。

演奏のポイント!

唄、尺八、囃子のトリオです。いまどきの節回しは、地元コンクールの優勝者か、産経民謡大賞を参考になさると良いかもしれません。南国ののんびりとはいえ、のど自慢さんの手にかかれば、節回しは彩り鮮やかで、尚且つ、日向の山々に響き渡る情景が思い浮かぶほどです。こういう辺りは、僕のような神戸の街中に住む者には、なかなか出せない味わいですね。それはもちろん、囃子の方にも、尺八伴奏の方にも言えることです。一度、現地へ出向いて、かつて山師たちが活躍し、口ずさんだであろうそのシチュエーションを、肌で感じてみたいなと・・・
どこの国の民謡によらず、民謡とはそれくらいにして味わうものなんですね~

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