民謡は難しくないし、古臭くない! 日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。
令和4年は「北海道シリーズ全10曲」で明けたいと思います。東北に負けず劣らずな民謡の宝庫!
50音順に、まずは「いやさか音頭」から、はじまりはじまり~♪
児玉宝謹の寸評
民謡を習い始めて、最初に取り組む東物の一つとしてよく活用されているのが、このいやさか音頭です。東物は太棹で「スピード・パワー・テクニック」と、バンバン押す感じの曲が多い中で、このいやさか音頭は比較的穏やかな曲想で、取り組み易いです。
歌詞を読んでみよう
姉コこちゃ向け かんざし落ちる(ハァ イヤサカサッサ) かんざし落ちない「ナァ」顔見たい
「アリャ」顔見たい 落ちない「ナァ」顔見たい
お前行くなら わしゃ何処までも( ) 蝦夷や千島の「 」果てまでも 「 」
十七、八なら 山サもやるが( ) 山にゃ人刺す「 」虫がいる 「 」
沖のカモメに 潮時問えば( ) わたしゃ立つ鳥「 」波にきけ 「 」
恋の九つ 情けの七つ( )合わせ十六「 」投げ島田 「 」
漁場の姉コは 白粉要らぬ( ) 銀の鱗で「 」肌光る 「 」
来いちゃ来いちゃで 二度だまされた( ) またも来いちゃで「 」だますのか 「 」
私ゃ聞いてた 障子の陰で( ) 田んぼ二反は「 」嫁支度 「 」
久しぶりだよ 故郷の月に( ) 二人並んで「 」踊るのも 「 」
私ゃ音頭取って 踊らせるから( ) 夜明け烏の「 」渡るまで 「 」
詳しい解説
北海道の作業唄。日本海沿岸、函館から増毛(ましけ)あたりまでの広い範囲で唄われていた。
当地でニシン漁が盛んだった頃、漁場で働くヤン衆たちが本州から運んできたもので、その本流は、秋田地方の「地つき唄」とか、青森県西津軽辺りの「鰺ヶ沢甚句」であろうと言われている。
いやさか音頭という曲名は、囃子言葉の”イヤサカサッサ”から名付けたもので、ニシン場の網の目にびっしりと産み付けられた数の子を叩き落とす「網打ち唄」に使われたり、盆踊りや酒の席で盛んに唄われてきたものである。現在ではニシン場当時の激しさ、生きの良さは消えて、和やかな調子になっており、また囃子言葉に”ヨーイヨーイヨイヨイヨイ アリャリャン コリャリャン”とつけるようになって、全くの北海道の唄となっている。従ってニシン漁労の情景を再現する「沖上げ音頭」などの中で演唱する場合は、子叩き作業の勇ましさを表現する唄いぶりが好ましいが、単独で唄う場合は、彌榮の氣持ちを込めた明るさが欲しいところ。しかし現在は地方によって唄い方がまちまちで、「いやさか四節」として、新民謡と「いやさか節」「北海いやさか」「道南いやさか」などがある。
演奏のポイント
編成としては、お三味線、尺八か篠笛、鳴り物に、お唄とお囃子という典型的な民謡クインテットです。そして上記の解説にもあるように、かつては荒波の上での厳しく激しい作業で唄われていたので、和やかな曲想になったとはいえ、その名残りは醸し出したいところ。とはいえ、どことなくウキウキする感じは否定せず、あくまでも楽しく演奏して下さいませ。北海道でニシンは「松前の米」とさえ言われたほど、大漁で大漁でウハウハだったのですからね。