民謡は難しくないし、古臭くない!日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。第19弾は高知県民謡、「よさこい鳴子踊り」。
「鳴子を両手に持って踊る」という、見る方も元気の出るスタイルは、南国高知のよさこい祭りの基本。その明るい雰囲気を鳴子に乗せて、今で全国各地で踊られている「新民謡」です。
児玉宝謹の寸評
はい!お約束通り、前回の「よさこい節」に続く、「よさこい鳴子踊り」でございます~。
“よさこい”の語源が「夜サ来い」であるなら、こちら“ヨッチョレ”は「避けておれ」であるとか…。かつて僕も、よさこい祭りには参加させて頂いたのですが、阿波おどりが古典に根ざしたものであるなら、よさこい祭りは現代的ですね。
それでも「よさこい」「よっちょれ」というフレーズは挿入するべしというルールが厳として存在しているので、どんなに大音量スピーカーであっても、楽曲にテクノサウンドを取り入れても、派手な衣装を纏っても、そこはそれ「伝統芸能」だと思います。
歌詞を読んでみよう
「ヨッチョレヨ ヨッチョレヨ ヨッチョレヨッチョレ ヨッチョレヨ ヨッチョレヨッチョレ ヨッチョレヨ 高知の城下へ来てみいや じんばもばんばも よう踊る 鳴子両手によう踊る よう踊る」
土佐の *ヨイヤサノサノサノ
高知の はりまや橋で *ヨイヤサノサノサノ
坊さんかんざし 買うを見た(ホイ)
「ヨサコイ ヨサコイ」(ホイホイ)
「 」 みませ* みせましょ 浦戸をあけて* 月の名所は 桂浜「 」*( )
「 」 言うたち* いかんちや おらんくの池にゃ* 潮ふく魚が 泳ぎよる「 」*( )
「 」 土佐は* よい国 南を受けて* 薩摩颪が そよそよと「 」*( )
「 」 わしの* といちは 浦戸の沖で* 雨にしょんぼり濡れて 鰹つる「 」*( )
詳しい解説
高知県の作曲家、武政英策氏による作詞作曲の新民謡。
昭和31年、阿波踊りに対抗出来る街頭踊り用の曲をという、よさこい振興会からの依頼で作られた唄である。武政氏はまず、土佐の代表唄である「よさこい節」の歌詞とメロディを取り入れながら、次の3点に於いて構想を練った。
1.従来のよさこいよりテンポを上げて、街頭行進に相応しくする
2.南方系民族の土佐らしく*黒潮リズムを取り入れて勇壮なものにする
更に迫力をつける手段として、手に鳴子を持って弾みをつける
3.後世に受け継がれる事が民謡の意義という点から、子どもも参加できるよう、前半はわらべ唄風に、後半は古いよさこいを残して大人向けとして構成する
以上から生まれたのがこの「よさこい鳴子踊り」である。以来、高知市では8月10日を中心に「よさこい祭り」を主催するようになり、今では阿波踊りに対抗する盛大な祭りになりつつある。鳴子とは元来、田畑の害虫を追い払う警報器だが、それをカスタネットのようなリズム楽器としたもの。また「よっちょれ」の囃子言葉は「よけておれ」の意。
*黒潮リズム
鹿児島小原節、八木節、津軽じょんから節等の一連に使われているリズムで、黒潮に乗って南方民族によって持ち込まれたとして、武政氏が名付けた。
演奏のポイント
この曲のポイントは、なんと言っても「鳴子」です。
鳴り物の方、リズムを確り&楽しげな音を出して下さい。
そしてお三味線は軽快に。但し、リズミカルだからといって必要以上なパワーは逆効果です。あくまで細棹ですから、粋な音色とアーティキュレーションが第一!それがあってこその「ノリのいいリズム」であるべきです。
あと、演奏ではないですが…踊り子さんも、明るい表情が必須ですよ~!