民謡は難しくないし、古臭くない!日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。第㉜弾は、秋田県民謡「秋田長持ち唄」。長持ち唄中の名曲と言われております♪
児玉宝謹の寸評
秋田県特集10曲中8曲目は、「秋田長持ち唄」。
「長持ち唄」つまり婚礼の唄は、全国各地にあります。僕の生まれ育った神戸にさえ、殆ど知られてませんが「神戸長持ち唄」があります♪
嫁入り道具の一つである箪笥を担ぐための長い棹を人足が持つので「長持ち」。いきおい、その時に先導が唄う唄を長持ち唄と言って、婚礼の唄の総称となりました。日本民謡で二大長持ち唄といえば、宮城長持ち唄と、この秋田長持ち唄です。前者が「今日は日も良し」で始まる歌詞で、男性が唄う、低音の渋い感じであるのに対して、この秋田は「蝶よ花よと」の歌詞で知られていて、女性の甲高い声が、如何にも哀感のこもった涙を誘います。
特に「今日は他人の手に渡す」や、「故郷恋しと思うな娘 故郷当座の仮の宿」なんて唄われたら~ もう親御さんは堪らないでしょうね・・・
歌詞を読んでみよう
<出発>
蝶よ「ナー・ヨー」花よと「ヨ」 *ハーヤレヤレー* 育てた娘
今日は「ナー・ヨー」晴れての「ヨ」 「オヤ」お嫁入り「ナーエー」
(または、 今日は「ナー・ヨー」他人の「ヨ」 「オヤ」手に渡す「ナーエー」 )
どんと「 ・ 」上げたる「 」* 長持ち箪笥
目出度「 ・ 」目出度で「 」「 」担ぎ出す「 」
笠を「 ・ 」手に持ち「 」* さらばと言うて
重ね「 ・ 」重ねの「 」「 」暇乞い「 」
さあさ「 ・ 」お立ちだ「 」* お名残り惜しや
今度「 ・ 」来る時ゃ「 」「 」孫つれて「 」
<道中>
今日は「 ・ 」吉日「 」* 日柄も良いし
嫁は「 ・ 」三国一「 」「 」今小町「 」
目出度「 ・ 」嬉しや「 」* 思うこと叶うた
末は「 ・ 」鶴亀「 」「 」五葉の松「 」
<納入>
嫁の「 ・ 」荷物は「 」* この家の宝
受けて「 ・ 」下され「 」「 」ご亭主様「 」
箪笥「 ・ 」長持ち「 」* 七棹八棹
あとの「 ・ 」荷物は「 」「 」馬で来る「 」
故郷「 ・ 」恋しと「 」* 思うな娘
故郷「 ・ 」当座の「 」「 」仮の宿「 」
詳しい解説
秋田県民謡。
この唄は題名通り、婚礼の時に唄われる祝い唄で、別名「嫁入り唄」とも言う。花嫁の衣装を入れた婚礼の長持ちは駕籠のような体裁になっているので「カゴ担ぎ唄」「籠かけ唄」と呼ぶ地域や、または梵天納めの唄にしている地域もある。
長持唄は全国各地にあり、東北では宮城長持唄が代表的と考えられがちだが、この秋田長持唄も独特の曲調を持っており、他所のそれにひけをとることはない。その節回しが秋田に定着したのは、NHKのど自慢で浅野和子氏が優勝してからであり、その曲が、父梅若のテクニカルな秋田三味線を伴奏とした指導が奏功した以後である。
長持唄は、婚礼という目出度い行事の祝い唄であるにも関わらず、嫁の門出が「暇乞い」という惜別の情を唄う哀調の唄になり過ぎるのは一考を要することで、歌詞それぞれの持つ内容に従って唄い分けるほうがいい。その意味でこの唄は大きく分けて「出発」「道中」「納入」に分けられる。これを哀調一色で唄うと、如何にもお涙頂戴になってしまうので注意が必要である。
演奏のポイント
唄、囃子、尺八のトリオです。
唄い手はもちろんですが、囃子もいわゆる「ゆりこぶし」が必要な曲なので、一定以上のレベルの方が相応しいです。もともと帯域が高いので、6本(8寸)でも充分。むしろ下手に8本(6寸)とかだと、キンキンし過ぎて、唄の魅力は半減します。涙は誘うけど、あくまで目出度い唄なので、そこはしっとりとした曲想であってほしいと思います。