日本民謡ガイドブック

民謡ガイド㊱ シャンシャン馬道中唄 ~解説、歌詞、意味~

民謡は難しくないし、古臭くない!日本に伝わる民謡を一曲ずつ解説していきます。宮崎県シリーズ第二弾は「シャンシャン馬道中唄」をお届けします。初めての方は読みにくいかもですが「シャンシャンうま、道中うた」という文節です。。。

児玉宝謹の寸評

「日向の四名曲」とは、僕個人的な呼び方なんですが、前回の稗搗節と、このシャンシャン馬道中唄、それに次回以降に準備している、刈干切唄と、日向木挽き唄の4曲を指しています。これらは本当に名曲で、宮崎県民が誇る郷土民謡といってもいいと思っておられると思います。これらは、元々の曲調が優れていたものもありますが、地元の民謡家那須 稔氏の功績に負うところも大きいです。
特にこのシャンシャン馬道中唄は、後述する解説にもありますように、元は長念仏のようであったとのことですが、それは如何にも、道中の困難さをそのまま唄い表していたのではないかと思うのです。文明の利器の恩恵に浴している現代人には到底敵わないほど、厳しいものであったはずだと・・・しかし、そこはやはり「婚礼の幸せ」に変えて、何度唄っても飽きないほど、かように涼やかで美しい名曲に整えた辺り、那須氏のこの曲に込める想いと、若い二人に捧げる愛ではないかと思うのですよね~ こういう曲を唄いながらであるなら、道中の、ひいては浮き世の厳しさも、二人で乗り越えていこうと思えるのではないでしょうか。

歌詞を読んでみよう

鵜戸さん参りは 春三月よ 参る(ハラセ) 参るその日が ご縁日(ハァ コンキーコンキー)
参りゃとにかく 帰りの節は つけて(ハラセ) つけておくれよ 青島へ(ハァ コンキー コンキー)

鵜戸さん参りに 結うたる髪も 馬に(   ) 馬に揺られて 乱れ髪(   )
行こか参ろか 七坂越えて 鵜戸の(   ) 鵜戸の神社は 結び神(   )

鵜戸さんよいとこ 一度はおいで 一目(   ) 一目千里の 灘がある(   )
音に名高い せびらの峠 坂は(   ) 坂は七坂 七曲がり(   )

 

詳しい解説

宮崎県日南地方の民謡。
江戸時代から明治末期までこの地方では、結婚すると鵜戸神宮へ参詣する習慣があった。花嫁は赤い毛布を敷いた馬に乗り、花婿が手綱を引いて、シャンシャンと馬齢を鳴らしながら鵜戸参りをするのである。
現在でこそ歌詞中の青島からは、日南海岸のドライブウェイで1時間ほどであるが、当時は七浦七峠と呼ばれる難所が続き、徒歩で2泊3日の行程であった。囃子言葉の「コンキー」も、根気が要るという意味である。
鵜戸神宮は、奇岩に囲まれた波蝕洞窟の中にあり、以前から母乳が出るようにと参詣する人も多かった。神話によれば、山幸彦と海神の娘との間に生まれた、ウガヤフキアエズノミコトの生誕地といわれている。
もとは念仏教のようであった元唄を、昭和30年頃、地元の那須 稔(美静)が発掘し、今日のような曲調に整えた。

 

演奏のポイント

お唄、お三味線、尺八か篠笛、そしてお囃子は馬子鈴を兼ねるので、カルテットが最低限の要員です。お囃子は二人だと涼やかだし、お三味線も2丁だとより音圧が増しますし、馬子鈴は鳴り物の方がなさっても結構ですが、お囃子が兼ねてもさほど負荷の高いものではないので~
この唄はやはり女唄だと思います。
7本か8本で甲高く、張りと伸びのある声で、
お囃子もさらに甲高く涼やかに、
馬子鈴は控えめに、
管楽器はあまり唄にベタ付けせず、ポイントだけ撫でるように軽く演奏するほうが、唄を引き立たせますね。
お三味線も、要所要所にスリを入れて、ほのかな哀調を醸し出せればベストですが、それもさり氣なくして下さい。
伴奏とはあくまで「ともなって、かなでる」ものですので。名演を期待しています。。。

 

 

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